外国人介護人材の採用ガイド|制度・費用・日本語レベルを施設向けに解説

介護業界の人材不足が深刻化する中で、早番が埋まらない。夜勤者の負担が偏る。求人を出しても介護職員の応募が増えず、管理者が急きょ現場に入る日が続いている。
そんな中で、外国人介護人材の採用を考え始める介護事業所(介護施設)は少なくありません。ただ、調べ始めると、特定技能、技能実習、EPA、在留資格「介護」など制度名が多く、どのルートが自社に合うのか迷いやすいところです。
採用費だけで海外人材の採用を進めると、入職後に教育担当者へ質問が集中したり、申し送りや介護記録で本人が戸惑ったりします。日本語レベル、任せる業務、海外人材の生活支援、シフトへの入り方まで見ておかないと、採用後の負担が想定より大きくなることもあります。
外国人介護人材の採用では、制度の理解より先に、入職後1ヶ月目に任せる業務、日本語のコミュニケーションで確認したい場面、教育担当者の決定、採用費の見方を決めておくことが欠かせません。
この記事を読み終えるころには、自社で採用できそうか、どの受け入れルートが現場でトラブルが起きにくいかを具体的に考えられる状態を目指します。
外国人介護人材の採用で最初に見ること
外国人介護人材の採用は、制度選びからではなく「現場で任せたい業務」から逆算して考えるのが現実的です。
任せる業務が曖昧なまま採用を進めると、既存職員が「どこまで任せてよいのか」と不安を抱くようになり、結果として教育担当者に過度な負担がかかってしまいます。
海外人材を採用するときに最初に見るポイントは、介護職員の欠員数だけではありません。
早番の食事介助を海外人材を採用して支えてほしいのか、日中帯の入浴介助に海外人材を当てたいのか、
将来的に海外人材に夜勤を任せたいかどうかで、採用すべき人材像は大きく変わります。
介護職員の人材不足だけで始めない理由
外国人介護士を「足りないシフトを埋める人」とだけ考えると、入職後にズレが生じます。
たとえば、日勤帯の人手不足を補うつもりで採用したものの、実際には記録や申し送りの習熟に時間がかかり、
初月は教育担当者が横につく場面が増えることがあります。
これは本人の能力だけの問題ではありません。
記録様式、フロアごとの声かけ、利用者ごとの留意事項、家族対応の言い回しは、施設ごとに違います。
管理者が初月の業務範囲を決めていないと、現場側の期待だけが先に大きくなってしまいます。
制度より先に決めたい5つの項目
キズナキャリア編集部では、外国人介護人材の採用を制度名だけで見ないことを勧めています。
先に見るべき項目は次の5つです。
| 採用前に見る項目 | 現場で考えること |
|---|---|
| 初月に任せる業務 | 食事介助、見守り、清掃、移乗補助など、最初の担当範囲 |
| 日本語で確認したい場面 | 申し送り、介護記録、利用者対応、緊急時報告 |
| 教育担当と副担当 | 誰が教え、誰が不在時に支えるか |
| 生活支援の範囲 | 住居、行政手続き、通勤、生活相談の窓口 |
| 3か月後・6か月後の業務 | 夜勤、記録、入浴介助、担当利用者の広げ方 |
この5つを先に置くと、制度の見え方が変わります。特定技能が合うのか、介護福祉士を持つ人材がよいのか、教育前提で受け入れるのかを、現場の言葉で比べられるようになります。
外国人介護人材の受け入れ制度
介護分野で使われる主な受け入れルートは、特定技能、技能実習、EPA、在留資格「介護」です。制度の目的を見ないまま選ぶと、採用したい期間、支援義務、本人の将来像が合わなくなることがあります。

介護分野の受け入れ制度は、厚生労働省の外国人介護人材に関する案内で公表されています。管理者は制度名を覚えるよりも、「自社の現場でどの受け入れ方なら教育できるか」を見たほうが実務に落とし込みやすくなります。
| 制度・在留資格 | 主な特徴 | 経営者が見るポイント |
|---|---|---|
| 特定技能 | 人手不足分野で一定の技能と日本語力を持つ人材を受け入れる制度 | 採用ルートとして使いやすい一方、支援体制が必要 |
| 技能実習 | 技能移転を目的とした制度 | 人材確保だけを目的にしない設計が求められる |
| EPA | 経済連携協定にもとづく介護福祉士候補者の受け入れ | 国家試験を見据えた学習支援が必要 |
| 在留資格「介護」 | 介護福祉士資格を持つ人が介護業務に従事する在留資格 | 介護福祉士としての業務を任せやすい |
特定技能の基本
特定技能は、人手不足がある産業分野で、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。介護分野では、原則として介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力に関する要件を満たす必要があります。
特定技能1号は通算在留期間が原則5年以内です。受け入れ機関は支援計画を作成し、生活オリエンテーション、
日本語学習の機会、相談対応などを行います。
自社だけで対応が難しい場合は、登録支援機関へ委託する方法もあります。
制度の詳細は、出入国在留管理庁の特定技能制度に関する案内で最新情報を見られます。

技能実習の基本
技能実習は、日本で身につけた技能を母国へ移転する目的を持つ制度です。介護職種にも固有の基準があり、日本語学習や指導体制が求められます。
施設側が注意したいのは、技能実習を単なる人員補充として扱わないことです。教育担当者が、身体介助の手順だけでなく、利用者への声かけ、記録の書き方、感染対策の理由まで教える場面が出てきます。実習としての計画が弱いと、本人も既存職員も何を目標にすればよいか迷います。
EPAと在留資格「介護」の基本
EPAは、経済連携協定にもとづいて外国人介護福祉士候補者を受け入れる仕組みです。候補者は受け入れ施設で就労・研修を行いながら、介護福祉士国家試験の合格を目指します。国家試験を見据えるため、施設側には学習時間や受験支援の設計が求められます。
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を持つ人が、日本の機関との契約にもとづいて介護または介護の指導を行うための在留資格です。在留期間は5年、3年、1年または3月が設けられています。詳細は、出入国在留管理庁の在留資格「介護」に関する案内で確認できます。
外国人介護士の採用費用
外国人介護士の採用費用は、採用単価だけでは見きれません。支援費、住居準備、生活立ち上げ、教育時間、離職時の再採用費まで含めると、見た目の金額と実際の負担がずれることがあります。
費用面で見ると、管理者が気にするべきなのは「いくらで採用できるか」だけではありません。初月に教育担当者がどれだけ同行するか、記録チェックに何分かかるか、生活相談を誰が受けるかまで含めると、現場の時間も費用の一部です。
採用前にかかる費用
採用前には、募集・紹介・面接・在留手続き・渡航関連・書類準備などに費用が発生する場合があります。金額は採用ルートや契約内容によって変わるため、一般的な相場を一律で見るより、内訳で確認するほうが現実的です。
特に、海外在住者を受け入れる場合は、来日前の連絡、入国時の調整、住居準備なども見ておく必要があります。施設長が費用表だけを見て決めると、実際には事務長や管理者の作業時間が大きくなることがあります。
採用後にかかる費用
採用後には、登録支援機関への委託費、住居の初期費用、生活用品、行政手続きの同行、日本語学習支援などが発生することがあります。特定技能では、1号特定技能外国人への支援計画が必要で、支援を自社で行うか外部へ委託するかで費用の出方が変わります。
受け入れ後の費用を早めに見ておくと、社内で稟議を通すときに説明しやすくなります。採用費だけでなく、支援費や受け入れ後の費用も先に見ておきたい場合は、料金表ダウンロードページで費用の内訳を確認できます。

教育時間と離職時のやり直しコスト
見落とされやすいのが、教育時間です。たとえば初月に教育担当者が毎日30分、記録や申し送りを確認するだけでも、1か月では大きな工数になります。さらに、教育内容が日によって変わると、本人は「昨日と今日で言われることが違う」と感じやすくなります。
早期離職が起きると、採用費だけでなく、面接、書類、教育、シフト調整をやり直すことになります。既存職員が「また一から教えるのか」と感じると、次の受け入れにも慎重になりがちです。費用を見るときは、採用時点だけではなく、6か月後に戦力化しているかまで含めて考えたいところです。
日本語レベルと介護現場の見方
日本語レベルは、試験の等級だけで決めきれません。等級を見ないまま採用するのも危険ですが、N4やN3だけで介護記録、申し送り、緊急時報告まで任せられると考えるのも避けたいところです。
JLPTは、日本語能力試験のことです。N4は基本的な日本語をある程度理解できる水準、N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる水準とされています。詳しい目安は、日本語能力試験公式サイトのN1〜N5の認定目安で見られます。
申し送りで見る日本語
申し送りでは、短い時間で状態変化を伝える力が求められます。「昨日より食事量が少ない」「右足をかばって歩いている」「夜間に2回起きた」など、事実を時系列で話せるかが大切です。
教育担当者は、本人の日本語を「会話ができるか」だけで見ないほうがよいです。利用者と笑顔で話せても、申し送りで必要な言葉が出てこないことはあります。面接では、介護場面を想定して、見たことを短く説明してもらうと現場でのイメージが持ちやすくなります。
介護記録で見る日本語
介護記録では、長い文章よりも、事実を簡潔に書く力が求められます。「転倒した」だけでは足りず、いつ、どこで、どのような状況だったかを残す必要があります。
ただ、最初から日本人職員と同じ記録を求めると、本人が萎縮することがあります。初月はチェック欄や定型文を使い、3か月後に自由記述を増やすなど、段階をつくるほうが現場に合います。既存職員も、どの記録なら本人に任せるかを共有しておくと、確認作業の偏りを減らせます。
利用者対応で見る日本語
利用者対応では、文法の正確さだけでなく、聞き返す力が大切です。利用者が方言や小さな声で話したとき、分からないまま進めるのではなく、「もう一度お願いします」「痛いところはどこですか」と確認できるかが安全に関わります。
家族から質問された場面では、本人だけで抱え込ませない体制も必要です。家族対応の範囲を決めずに現場へ出すと、本人が答えてよい内容と管理者へつなぐ内容で迷います。日本語力を見るときは、会話の上手さだけでなく、報告・相談のタイミングまで見ておきたいところです。
業務範囲とシフト設計
外国人介護人材をシフトに入れる前に、制度上の可否と現場運用を別々に見る必要があります。制度上働ける業務でも、夜勤や訪問系サービスでは安全面、連絡体制、利用者・家族への説明が欠かせません。
夜勤者が一人で転倒対応をする場面や、訪問先で利用者の体調変化に気づく場面では、日本語力だけでなく、報告ルートと判断の基準が問われます。管理者は「入れるかどうか」ではなく、「どの条件を満たしたら任せるか」を先に決める必要があります。
施設系サービスでの配置
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、有料老人ホームなどの施設系サービスでは、複数人の職員で業務を行う場面が多く、教育やフォローを組み込みやすい面があります。初月は日勤帯で利用者の名前、フロア動線、記録様式を覚え、少しずつ介助範囲を広げる形が現実的です。
既存職員が迷いやすいのは、本人に声をかけるタイミングです。「見守りは任せてよいが、移乗は必ず声をかける」「服薬に関わる場面は看護職へつなぐ」など、線引きを明文化しておくと現場の不安が軽くなります。
訪問系サービスでの注意点

訪問介護などの訪問系サービスについては、技能実習生や特定技能外国人でも、介護職員初任者研修課程等の修了や介護事業所等での実務経験など、一定の条件を満たす場合に従事が認められる扱いになっています。受け入れ事業所には、利用者・家族への事前説明などの対応も求められます。詳細は、厚生労働省の訪問系サービスへの従事に関する案内で確認できます。
訪問系サービスでは、本人が一人で利用者宅へ入る場面があるため、施設内よりも判断の余白が小さくなります。利用者が発熱している、転倒の跡がある、家族から急に相談される。こうした場面で、本人が誰へ、どの順番で連絡するかを決めておくことが欠かせません。
夜勤配置の考え方
夜勤は、制度上の可否だけでなく、施設ごとの安全基準で考える必要があります。夜間は職員数が少なく、転倒、発熱、不穏、看取りに近い変化など、短時間で報告が必要な場面が起きます。
夜勤者として配置する前には、少なくとも日勤帯での記録、申し送り、急変時の連絡手順を確認しておきたいところです。本人が「何か変だ」と感じたときに、遠慮せず電話できる相手がいるかも大きなポイントです。夜勤を任せる時期は、日本語の等級だけでなく、現場での報告行動を見ながら決めるのが現実的です。
採用後の教育体制と定着支援
外国人介護人材の定着は、本人の努力だけで決まりません。教育担当、相談先、生活支援、評価の伝え方を決めないまま配属すると、本人の不安が見えないまま大きくなります。
初月に教育担当者へ質問が集中する施設では、担当者が通常業務を抱えたまま教えることになりがちです。既存職員の負担を減らすには、入職前に「誰が何を教えるか」を決めておく必要があります。
主担当と副担当
教育担当者は一人に固定しすぎると、休みの日に本人が質問できなくなります。主担当と副担当を置き、記録、介助、生活相談で役割を変えると、本人も相談先を選びやすくなります。
たとえば、介助手順はフロアリーダー、記録は事務長または記録に強い職員、生活面は管理者が窓口になる形です。本人が困ったときに「誰へ聞けばよいか」が見えているだけで、離職リスクは下げやすくなります。
よくある失敗
よくある失敗は、「日本語試験に合格しているから大丈夫」と考え、初月から現場任せにすることです。
利用者への声かけはできても、申し送りや記録で止まり、教育担当者が毎日修正する状態になることがあります。
もう一つは、生活支援の範囲を決めないまま受け入れることです。銀行口座、住民登録、通勤経路、病院受診、携帯電話の契約など、仕事以外の相談が管理者に集中すると、現場管理の時間が削られます。支援の範囲を曖昧にすると、本人も「どこまで相談してよいか」で迷います。
候補者を見るときの流れ
制度を理解しても、自社に合う候補者がいるかは別の問題です。採用後のミスマッチを減らすには、候補者の日本語レベル、介護経験、希望勤務、生活面の希望まで見ておく必要があります。
候補者を見るときは、次の順番が現場に合います。
- 初月に任せる業務を決める
- 申し送り・記録・利用者対応で必要な日本語を決める
- 教育担当と副担当を決める
- 生活支援の範囲を決める
- 3か月後・6か月後に任せたい業務を決める
制度名だけで選ぶより、候補者の経験や希望条件まで見たほうが、配属後のズレを減らせます。日本語レベルや介護経験を見ながら考えたい場合は、人材スカウト画面で候補者の条件を確認できます。

まとめ
外国人介護人材の採用では、制度名を覚えるだけでは十分ではありません。特定技能、技能実習、EPA、在留資格「介護」にはそれぞれ目的や条件があり、費用、日本語レベル、教育負担、シフト設計まで合わせて見る必要があります。
採用前に見るべき軸は、初月に任せる業務、日本語で確認したい場面、教育担当と副担当、生活支援の範囲、3か月後・6か月後に任せたい業務です。この5つが決まっていると、制度や候補者を現場目線で比べやすくなります。
次に取る行動は、制度をさらに調べることだけではありません。費用を把握し、候補者像を見て、自社の受け入れ体制と合うかを考えることです。採用を急がず、現場に合う条件を言語化するところから始めると、採用後の負担を抑えやすくなります。
よくある質問
外国人介護人材を採用できる主な制度は何ですか?
介護分野では、主に特定技能、技能実習、EPA、在留資格「介護」の4つのルートがあります。制度ごとに目的、在留期間、受け入れ条件、支援の内容が違います。制度の入口は、厚生労働省の外国人介護人材に関する案内で確認できます。
特定技能の外国人介護士は何年働けますか?
特定技能1号の通算在留期間は、原則5年以内です。介護分野では、特定技能として働きながら介護福祉士資格の取得を目指し、将来的に在留資格「介護」へつなげるケースもあります。在留期間の考え方は、出入国在留管理庁の通算在留期間に関する案内で確認できます。
外国人介護士は夜勤に入れますか?
夜勤に入れるかは、制度上の可否だけでなく、施設側の教育状況と安全体制で考える必要があります。夜勤では転倒、発熱、不穏、緊急連絡などが起きるため、申し送り、記録、電話報告ができるかを事前に見ておきたいところです。最初から単独夜勤へ入れるのではなく、日勤帯での報告行動を確認してから段階的に検討する施設が多いです。
N4の外国人介護士に介護記録を任せてもよいですか?
N4は基本的な日本語をある程度理解できる水準ですが、介護記録をどこまで任せるかは試験等級だけでは決めきれません。記録には、時間、場所、状態変化、対応内容を短く正確に書く力が必要です。初月は定型文やチェック式の記録から始め、教育担当者が確認しながら自由記述を増やすほうが現場に合います。
訪問介護で外国人介護人材を受け入れるときの条件は何ですか?
訪問介護などの訪問系サービスでは、技能実習生や特定技能外国人についても、介護職員初任者研修課程等の修了や介護事業所等での実務経験など、一定の条件を満たす場合に従事が認められています。利用者・家族への事前説明や、緊急時の連絡体制も必要です。詳細は、厚生労働省の訪問系サービスへの従事に関する案内を確認してください。
特定技能の外国人介護士は転職できますか?
特定技能では、所属機関を変更する場合に在留資格変更許可申請が必要です。転職そのものを前提に採用を怖がるより、本人の希望条件、評価の伝え方、相談先、生活支援を整えて定着につなげるほうが現実的です。手続きの基本は、出入国在留管理庁の在留資格「特定技能」に関する案内で確認できます。


