訪問介護で特定技能外国人は雇用できる?訪問系サービスの要件と受け入れ準備

特定技能介護の訪問系サービス従事・キズナキャリア

ヘルパーさんの退職が続いてサービス提供責任者が
現場を回りながらシフトを組み、求人を出しても応募が来ない……。
人材紹介会社に頼るたびに高額な費用ばかりがかさんでいく――。

いま、そんな苦しい状況の中で
「訪問介護でも外国人スタッフを雇えないだろうか」
と検討する事業所がとても増えています。

訪問介護は介護施設と違って「利用者のお宅での一人対応」が基本です。
そのため、施設ケア以上に日本語の理解力、緊急時の対応力、
ご家族への説明力が求められます。

結論からいうと、条件を満たした特定技能外国人は、
訪問介護などの訪問系サービスに従事できます。

ただし、介護職員初任者研修課程等の修了、実務経験、
事業所側の研修・同行・利用者説明・相談体制などを先に整える必要があります。

「制度上、配置してもいいから」と準備不足のままスタートしてしまうと、
同行訪問や事前研修、ご家族向けの説明資料作りなどが後回しになり、
結果として管理者の方や教育担当者様にすべての負担が重くのしかかってしまいます。

この記事を読み終えるころには、
「うちの訪問介護事業所でも、外国人スタッフを無理なく受け入れられそうか?」
「採用を決める前に、現場で何を準備しておくべきか?」
「気になる費用や日本語レベルは、どこまでチェックすれば安心か?」
といった疑問が解消し、採用に向けた具体的な一歩を考えられるようになります。

不安や疑問をひとつずつ解き明かしながら、
自社にぴったりな受け入れの形を見つけていきましょう!

目次

訪問介護で特定技能外国人を雇用できる条件

訪問介護でも、決められた条件をクリアしていれば
特定技能の外国人スタッフを採用することができます。

ただし、事前の要件整理を行わずに採用してしまうと、
同行訪問のスケジュール確保や利用者への事前説明が後手に回ってしまいます。

サービス提供責任者の方が突発的なトラブルや確認作業に追われないよう、
採用を決める段階でルールと手順をすり合わせておきましょう。

国の公式なルールでは、技能実習生や特定技能の外国人スタッフが
訪問介護などの訪問系サービスで働くための条件が定められています。

  • 介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)などを修了していること
  • 原則として、介護施設などで1年以上の実務経験があること

「日本語や介護の基礎をしっかり学び、施設などで1年以上経験を積んだ人材」
であれば、訪問介護のお仕事に入ることができる、という仕組みになっています。

詳しい扱いは、厚生労働省の外国人介護人材の訪問系サービスへの従事に関する案内で確認することができます。

外国人介護士の訪問系サービスの従事について・キズナキャリア

特定技能(訪問介護)受入に必要な「2つの視点」

特定技能の外国人スタッフを訪問介護に配置するときは、
「本人側の要件」と「事業所側の体制」の2点をしっかりチェックする必要があります。

本人がいくら優秀であっても、同行訪問による指導や、
緊急時の連絡体制が不十分なまま単独訪問を行わせることは
大きなリスクとなります。

事前に確認しておくべき項目は、次のとおりです。

スクロールできます
見る項目内容現場での見方
研修修了介護職員初任者研修課程等の修了訪問介護の基本動作を学んでいるか
実務経験原則として介護事業所等で1年以上食事、排泄、移乗、記録の経験があるか
事業所の研修訪問介護の基本事項に関する研修利用者宅でのマナー、時間管理、禁止事項を教えられるか
同行訓練責任者等による一定期間の同行利用者ごとの手順を本人が再現できるか
利用者説明利用者・家族への事前説明家族から質問されたときに管理者が答えられるか
緊急時対応ICT等を含む連絡環境の整備転倒、体調急変、訪問遅れをすぐ報告できるか

人手が足りないとき、管理者が真っ先に「このシフトの穴を埋めてほしい!」
と考えてしまう気持ちはとてもよく分かります。

ですが、外国人スタッフを訪問介護に配置するときに最初に見るべきなのは、
「人手が足りない時間に入れるか」ではなく
「どの利用者のお宅なら、同行訪問のあとに安心して任せられるか」です。

たとえば、
認知症の症状があり声かけの工夫が必要な利用者、
家族から細かい報告を求められる利用者、
医療職への連絡が多い利用者、のようなケースでは、
本人の日本語力や現場経験をより慎重に見極める必要があります。

本人の習熟度に応じた適切な訪問先の選定が、初期のトラブルを防ぎ、
スムーズな単独訪問への移行を可能にします。

訪問介護は制度上の可否だけでは足りない「現場での判断力と連絡」

訪問介護では、利用者宅でスタッフが1人対応になる時間が発生します。
施設勤務のように周囲の職員へ即座に確認できる環境ではないため、
現場で起きた状況をその場で適切に受け止め、
必要に応じてすばやく事業所へ報連相を行う力が求められます。

だからこそ、事前の同行訪問や「迷ったらすぐ事業所に電話する」
というルールの徹底が欠かせません。

たとえば、訪問先で利用者さんから
「今日は立つとふらつくんだよね」
と言われた場面をイメージしてみてください。

ここでは、外国人スタッフ自身が言葉の意味をしっかり理解し、
「いつもと違う」と気づいてサービス提供責任者へ
すぐに報告できるかがとても大切になります。

訪問介護で特定技能の外国人スタッフを採用するときは、
「同行期間」「訪問先の選び方」「緊急連絡の手順」の3つを
採用が決まる前の段階であらかじめ決めておくことが重要です。

採用後にルール作りを始めると、
既存スタッフは「どこまで任せていいのか」判断に迷い、
外国人スタッフ本人も不安を残したまま訪問に向かうことになります。

あらかじめ運用の枠組みを整えておくことが、現場の混乱を防ぎ、
スムーズな立ち上げにつながります。

訪問現場の混乱を防ぐ「4つの事前準備」

訪問系サービスで外国人介護人材をスムーズに受け入れるには、
「研修」「同行訪問」「利用者説明」「相談窓口」
採用前の段階で設計しておくことが必須です。

これらの運用ルールが曖昧なまま受け入れを行うと、
初月に指導担当者へ質問と負担が集中し、
結果として通常の訪問シフトやサービス提供まで圧迫されてしまいます。

現場の業務を安全に回し続けるためにも、
事前の体制構築を最優先で進めましょう。

特定技能外国人を訪問系サービスに配置する際、
受入事業所には「訪問研修・同行訪問」「キャリアアップ計画策定」
「ハラスメント相談窓口の設置」「緊急時対応の環境整備」
といった
多様な体制構築が義務づけられます。

加えて「適合確認書の発行」「定期的な報告業務」
など実務的な手続きも伴います。

こうした体制整備や事務手続きをスムーズに進めるためにも、
採用担当だけでなく、管理者やサービス提供責任者を
早い段階から巻き込んだ連携体制をつくることが重要です。

外国人介護スタッフの同行訪問は「実践的な訓練期間」としてみる

訪問介護における同行訪問は、単なる「付き添い期間」ではなく、
単独訪問に向けた実践的な訓練期間です。

標準的な訪問介護手順の理解、利用者ごとの個別性の把握、
現場での報告・連絡(エスカレーション)のタイミングの体得、
これらを段階的に習得してもらう期間として同行訪問を位置づけることで、
外国人介護スタッフの不安を解消し、安全な一人立ちへと繋げることができます。

同行中には、次のように実際の業務の場面に置き換えて確認しましょう。

スクロールできます
場面見るポイント教育担当者の確認
入室時あいさつ、本人確認、体調の聞き取り利用者の反応を見て声量や言葉を調整できるか
身体介護手順、安全確認、羞恥心への配慮利用者の表情や痛みの訴えに気づけるか
生活援助掃除、調理、買い物のルール利用者宅ごとのやり方を記録できるか
記録実施内容、状態変化、特記事項事実を短く残せるか
退室後申し送り、次回への注意点サービス提供責任者へ報告できるか

同行訪問の終了時、指導担当者の感覚(経験則)だけで
単独訪問の可否を判断することは避けましょう。
場面ごとのチェック項目を可視化し、記録として残しておくことが重要です。

客観的なチェック記録があることで、管理者が
「次にどの訪問先を任せるべきか」「いつ件数を増やすか」
を根拠を持って正しく判断できるようになります。

利用者・ご家族への事前説明:不安を解消する「4つの共有事項」

訪問介護における外国人材の配置では、
利用者およびご家族への丁寧な事前説明が欠かせません。

「外国人職員が伺います」という事実のみを伝えるのではなく、
以下の要素をセットで提示することが必要です。

  • 取得している資格・実務経験
  • 実施する社内研修の内容
  • 安心につながる同行訪問の体制
  • 万が一の際の緊急連絡先(事業所の対応窓口)

ご家族から「日本語で細かいお願いをして伝わりますか?」
「万が一、体調が急変したときは大丈夫ですか?」
と聞かれる場面は十分に考えられます。

このとき、管理者の方が
「国の制度で決められた要件を満たしていますから大丈夫です」
といった制度の説明だけで返してしまうと、ご家族の不安は消えません。

  • 同行訪問期間の設置
  • 最初は担当する利用者様を限定・選定すること
  • 現場で困った際の事業所への即時連絡ルールの徹底

このように「事業所として現場でどうフォローするか」
という具体的な手順まで提示することで、
ご家族に受け入れ後のイメージを明確に持っていただけます。

ハラスメントと緊急時の連絡体制:訪問介護だからこそ必要な「相談窓口」

訪問介護は「利用者宅」という密室環境で業務を行うため、
利用者やご家族から過度な言動やハラスメントを受けた際に、
外国人介護スタッフ本人が孤立しやすい傾向があります。

明確な相談窓口や連絡体制がない場合、スタッフが一人で我慢を重ね、
結果として早期離職やメンタル不調につながることも・・・

ハラスメント相談窓口を形骸化させないためには、
「誰に」「どの手段で」「いつ」連絡可能かを具体的に提示することが不可欠です。
また、「日本語での表現が難しい場合は母国語でメモを書いて相談しても良い」
と伝えておくことで、心理的ハードルが大きく下がります。

外国人スタッフが躊躇なく声を上げられる環境を整えることが、
トラブルの早期発見と定着率向上に直結します。

転倒事故や応答なし、訪問遅延などの緊急時には、
電話の口頭伝達だけに頼らない連絡ルールが必要です。

写真の送信可否やチャットツールの活用、
事業所側の折り返し担当者を明確にしておくことで、
迅速かつ正確な状況把握が可能になります。

また、夜間・早朝訪問がある場合は、
管理者一人に連絡が集中しないようオンコール体制を
分散・自動化しておくことが持続可能な運用のポイントです。

訪問介護での外国人受入:在留資格による「3つの違い」

訪問介護で外国人材を受け入れる際は、
「特定技能」「技能実習」「在留資格『介護』」の
それぞれの特徴と違いを把握しておくことが不可欠です。

制度名だけで安易に採用ルートを決定してしまうと、
在留期間の上限、受入事業所の支援義務、
将来的な業務範囲(訪問介護への従事要件など)

想定とのズレが生じてしまいます。

自社の運用体制や長期的な雇用計画に合った
在留資格を見極めて選考を進めましょう。

介護分野の外国人材受け入れには、EPA、在留資格「介護」、技能実習、
特定技能の4つのルートがあります。

制度については、厚生労働省の外国人介護人材の受入れに関する案内で確認することができます。

外国人介護人材受け入れの仕組み・キズナキャリア

また、技能実習制度は育成就労制度へ移行する予定があるため、
新規採用を考える管理者は最新情報も見ておく必要があります。

介護分野の主な受け入れルート「制度の違い」は目的と採用後の働き方

在留資格ごとの本質的な違いは、
その制度の「目的」と「実際の現場運用」に現れます。

訪問介護での採用においては、
「即戦力としてすぐ訪問に配置できるか」という点だけでなく、
入社3か月後・6か月後にどのような業務範囲を担ってもらうかまで
中長期的に設計しておくことが重要です。

段階的な育成イメージを持つことが、現場の教育計画をスムーズにし、
外国人介護スタッフの定着率向上につながります。

スクロールできます
ルート基本の考え方訪問介護で見るポイント
特定技能一定の技能と日本語力を持つ人材を雇用する制度要件を満たせば訪問系サービスに従事可能。支援計画や受入体制が必要
技能実習技能移転を目的とした制度一定条件で訪問系サービスに従事可能。制度変更の動きも確認
在留資格「介護」介護福祉士資格を持つ外国人が介護等に従事する資格専門職として長期的な活躍を見込みやすい
EPA経済連携協定にもとづく介護福祉士候補者の受け入れ国家試験を目指す育成色が強い

EPAは、経済連携協定にもとづいて外国人介護福祉士候補者を受け入れる仕組みです。

在留資格「介護」は、日本の国家資格である介護福祉士資格を持つ外国人が、
日本の機関との契約にもとづいて介護や介護の指導を行うための在留資格です。

介護福祉士資格を取得した外国人の扱いは、
厚生労働省の在留資格「介護」に関する案内も参考になります。

在留資格「介護」要件・キズナキャリア

特定技能1号の概要:在留期間と支援義務

「特定技能1号」は、
すでに一定の専門スキルや介護の技術を持っている外国人スタッフを
受け入れるための在留資格(ビザ)です。

出入国在留管理庁の公式ルールでは、
特定技能1号として日本で働ける期間は
「通算で「原則5年まで」と決められています。
即戦力に近い人材として活躍してもらえる一方で、
「最長で5年間の雇用になる」という計画を頭に入れておくことが大切です。

特定技能の受け入れでは、仕事・生活・社会生活にわたる
「支援計画」の作成と実施が義務づけられています。

支援業務を登録支援機関へ委託する場合であっても、
「訪問現場で誰が日々のフォローや相談を受けるか」は
自社内で明確にしておく必要があります。

生活支援を外部任せにしすぎると、本人の心理的孤立を招き、
勤怠の乱れ(遅刻・欠勤)や早期離職リスクが高まります。
職場内での「社内相談窓口・担当者」を必ず設定しておきましょう。

専門家の声(播 征幸)


特定技能1号の外国人の多くは、特定技能(介護)で従事しながら、いずれ介護福祉士の資格を取得し、在留資格「介護」に移行して、日本に永住することを望んでいます。
具体的には、特定技能の5年の間に介護福祉士の資格を取れば、在留資格「介護」に移行できます。介護福祉士試験を受けるためには介護の実務経験が3年必要なので、特定技能外国人は4~5年目の間で試験を受け、移行することがロードマップになります。

ただ、やはり特定技能外国人は日本の資格制度に詳しくなく、どう学べば効率的に介護福祉士の資格が取れるのか、真剣に考えて悩んでいます。介護施設側もそう言ったモチベーションの高い特定技能人材に対してきちんとサポートしてあげることが必要です。

訪問現場で問われる「実践的な日本語コミュニケーション力」

訪問介護における日本語能力の判断において、
日本語試験の合否(資格)のみで評価を完結させるのは避けたいところです。

実際の訪問現場では、
「申し送りの確認」「利用者の状態変化の聞き取り」「ご家族からの質問対応」
「緊急時の即時報告」といった多角的なコミュニケーションが発生します。

教科書通りの日本語だけでなく、
「実際の訪問現場で会話や報告がスムーズにできるか」という
実践的なやり取りの力を丁寧に見極めることが大切です。

JLPTは、日本語能力試験のことです。N4は基本的な日本語を理解できる水準、
N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる水準とされています。

介護分野の特定技能1号を取得するには、
一般的な日本語試験と介護専門日本語評価験の2つの合格が必要です。

特定技能介護日本語・介護日本語・キズナキャリア

N4・N3の判定基準:「資格の有無」から「実務の任用範囲」へ

日本語検定の「N4」や「N3」という資格は、
採用するときの日本語レベルを知るための良い目安になります。

ただし、訪問介護においては合否の確認だけで終わらせるのではなく、
「具体的にどのケアやどの訪問先であれば任せられるか」という
実務上の任用基準を見極めることが重要です。

スクロールできます
日本語を見る場面N4相当で見たいことN3相当で見たいこと
利用者への声かけ短い定型表現で伝えられるか相手の反応に合わせて言い換えられるか
申し送り予定、実施内容、変化を短く話せるか理由や背景も含めて説明できるか
介護記録決まった様式に事実を書けるか状態変化や注意点を簡潔に残せるか
家族対応質問を受けたら事業所へつなげるか基本的な説明をしたうえで報告できるか
緊急時報告「転倒」「発熱」「痛い」などを伝えられるか状況、時刻、本人の訴えを順序立てて伝えられるか

訪問現場では、利用者の「腰が痛くて立てない」といった
不調の訴えを聞き取れても、実際の報告や記録の段階で
重要な情報が欠落するケースがあります。

スタッフの実効的な日本語能力を見極めるには、
面接時や同行訪問の際に以下のアウトプットを確認することが有効です。

「現場の状況を30秒で口頭報告してもらう」
「観察した事実を記録欄に一文で記述してもらう」

「聞く力」だけでなく「報告・記録する力」を
実務に沿って確認することで、現場任用の確実性が高まります。

介護記録の指導「記録のフレームワーク」を提示する

介護記録の作成は、高い日本語能力を持つ人材であっても
実務に慣れるまで時間を要する業務です。

訪問介護での記録は、次回訪問者への引き継ぎだけでなく、
ケアマネジャーやご家族との情報共有に直結する重要な資料となります。

主観的で曖昧な表現を減らし、客観的で正確な事実を記載できるよう、
初期段階からの記録トレーニング記入ルールの標準化が求められます。

最初から長い文章を書かせるより、
次のような型(テンプレート)を用意すると教えやすくなります。

  • 何時に訪問したか
  • 何を実施したか
  • 利用者の様子に変化があったか
  • 事業所へ報告したことはあるか
  • 次回訪問者へ伝えることはあるか

もし本人が「いつもと様子が違う」と感じても日本語でうまく書けないときは、
写真で共有したり選択式のチェック項目を使ったりしてサポートするのも効果的な方法です。(※写真を送る際は、個人情報の取り扱いルールを事前に確認しておきましょう)

ここで気をつけたいのが、先輩スタッフが
「修正するのが大変だから」と毎回代わりに記録を書いてしまうと、
外国人スタッフの学ぶチャンスが減り、先輩スタッフの残業時間が増えてしまいます。

制度を理解しても、自社に合う候補者がいるかは別の問題です。
日本語レベルや介護経験を見ながら考えたい場合は、
人材スカウト画面で候補者の条件を確認できます。

「紹介料だけ」で考えると予算オーバーに?知っておきたい本当の費用

訪問介護における特定技能外国人の採用コストは、
人材紹介手数料(採用単価)だけを見て予算を組むのは少し危険です。

採用手数料に加え、登録支援機関への支援委託費住居確保生活立ち上げ費用、
さらには単独訪問へ移行するまでの「同行期間(2名体制)の人件費」
総合的に見込む必要があります。

特定技能の受け入れ費用は契約形態や採用ルートにより変動するため、
一般的な市場相場のみで社内決裁を通すのはリスクを伴います。

費用は契約内容や採用ルート(紹介会社・海外現地面接など)によって変わるため、
一般相場だけで社内決裁を通すのはリスクを伴います。

さらに、外部への支払費用だけでなく、
管理者が教育指導に割く「時間・人件費」も内部コストとして算出しておくことが重要です。

社内の指導教育の時間までコストとして見込んでおくことで、
採用後の現場の負荷増加や予算オーバーを事前に予測・管理できるようになります。

特定技能の費用試算:「採用前」と「採用後」で変わる費用

訪問介護における外国人採用では、
採用前と採用後で発生する費用の性質が大きく異なります。

人材紹介手数料(紹介料)の価格のみで判断してしまうと、
採用後に発生する「生活立ち上げ支援」「現場同行・教育の手間やコスト」
との間に認識のズレが生じ、「思ったより手がかかる」という不満になりがちです。

スクロールできます
費用項目内容見落としやすい点
採用費募集、紹介、面接、在留手続き関連採用できなかった場合の再募集
支援費生活支援、相談対応、登録支援機関への委託費など委託範囲と事業所側の役割
住居準備住まい探し、家具家電、初期費用通勤時間と訪問エリアの相性
教育費研修、同行、記録指導、面談サービス提供責任者の稼働時間
定着支援面談、日本語学習、生活相談相談先が曖昧な場合の離職リスク
離職時の費用再採用、シフト穴埋め、教育やり直し既存職員の疲弊

社内での検討や決裁をスムーズに進めるには、
採用費用(紹介手数料など)だけでなく、
採用後に発生する「生活支援コスト」や
「指導・教育時間」も合わせて提示することが必要です。

初期費用と現場の教育負荷をあらかじめセットで可視化しておくことで、
後からの認識ズレを防ぎ、社内の協力体制を構築しやすくなります。

費用を先に見ておきたい場合は、料金表ダウンロードページで採用前後にかかる費用を確認できます。

指導担当の属人化防止:「複数担当制」と「相談内容別の振り分け」

施設介護の場合、同じフロア内に先輩や同僚スタッフがいるため、
何か困ったことがあってもその場ですぐに確認ができます。

一方、訪問介護は利用者のお宅に一人で入ってサービスを提供するのが基本です。
そのため、訪問先での判断や事業所への報告・相談は、
ヘルパー本人の力量や判断に頼る部分が大きくなるという特徴があります。

「困ったときに周りに誰もいない」という訪問特有の環境を踏まえて、
事前のアドバイスや連絡ルートを用意してあげることが大切です。

外国人スタッフ入職初月に、指導担当者に負担が急増する背景には、
以下のような実務指導が同時並行で発生することに要因があります。

  • 利用者宅ごとの手順を覚える
  • 鍵の扱いや入退室ルールを覚える
  • 訪問記録の書き方を覚える
  • 家族からの質問を事業所へつなぐ
  • 急な体調変化を報告する
  • 訪問時間の遅れを連絡する

初月の教える範囲を絞り込み、マニュアルやチェックリスト
共通化しておくことが負担軽減につながります。

また、教育担当者を1人に固定してしまうと、
休日・夜間を問わず直接連絡が入るなど、
特定のスタッフへ負担が偏重するリスクがあります。

これを回避するには、「主担当・副担当」の複数体制を組み、
相談内容に応じた窓口の明示・切り分けが効果的です。

  • 介護の仕事・手順のこと➔ サービス提供責任者へ
  • 生活面・暮らしの悩み➔ 管理者へ
  • ビザ・在留資格の手続き➔ 担当部署または登録支援機関へ

あらかじめ「誰に何を聞けばいいか」を整理して本人にも渡しておくことで、
外国人スタッフも迷わず安心して質問できるようになります。

採用前におさえておきたい「現場のルールづくり」

訪問介護で外国人スタッフを採用するときは、
制度の名前や条件を調べること以上に、
「現場でどう働いてもらうか」というルール(現場条件)を
先に決めておくことがとても大切です。

任せる範囲やルールがあいまいなまま採用してしまうと、
指導する既存スタッフによって任せる業務範囲にブレが生じ、
外国人スタッフ側も目指すべき到達目標を見失う原因となります。

キズナキャリアの採用判断軸「5つのチェックポイント」

訪問介護に特定技能外国人を迎える場合は、
応募者を見る前に次の5つのポイントをあらかじめ事業所内で決めておくと、
評価や見極めの基準が具体的になり、面接や選考がスムーズになります。

スクロールできます
判断軸採用前に決めること訪問介護での例
初月に任せる業務入職直後の業務範囲同行中心、記録は下書き、訪問先は限定
日本語で確認したい場面会話・記録・報告の場面転倒報告、利用者の訴え、家族からの質問
教育担当と副担当誰が何を教えるかサービス提供責任者が業務、管理者が生活相談
生活支援の範囲住居、通勤、行政手続きの支援訪問エリアへの移動手段も含めて確認
3か月後・6か月後の業務成長後に任せたい範囲生活援助から身体介護へ、担当利用者を拡大

ここで大切なのは、
「外国人だから受け入れが難しい」と決めつけてしまわないことです。
日本人ヘルパーの新人さんであっても、お宅ごとの細かいルールを覚えたり、
ご家族への対応に慣れたりするのには相応の時間がかかります。

外国人スタッフの場合は、それに加えて「日本語のコミュニケーション」と
「日本での暮らしのサポート」が合流するだけです。

「特別なこと」と身構えるのではなく、
「最初の1か月の受け入れプラン(設計)を日本人よりも少し丁寧に準備しておく」という意識を持つことが、成功への一番の近道です。

よくある失敗「人手不足の穴埋めでシフトを組む」

採用したあとのシフト作成でよくある失敗が、
「人手が足りない時間帯(朝や夜)から逆算して、
本人の経験や日本語力を見ないまま訪問先を決めてしまうこと」です。

たしかに、事業所側としては「早朝の身体介護」や「夜間の訪問」
に入ってもらえると非常に助かります。

しかし、まだ現場に慣れていない外国人スタッフ本人にとっては、
プレッシャーや緊張がとても大きい時間帯でもあります。

最初は「人手不足の穴埋め」ではなく、
「本人が落ち着いて力を発揮できる時間帯やお宅」から
少しずつ任せていくことが、早期離職を防ぐためのポイントです。

たとえば、入職してすぐに一人で訪問へ出した結果、
利用者の体調変化をうまく報告できず、
家族から事業所へ不安の連絡が入ることがあります。

このとき、「日本語が下手だから」「本人の確認不足だ」と
スタッフ個人の問題にして終わらせてしまうのは間違いです。
本当の原因は、採用したあとに管理者が事前に「事故を防ぐための準備」
を作っていなかったことにあります。

訪問介護で特定技能外国人を受け入れる際は、
採用時や準備段階で次の8つのポイントを確認しておくと、
採用後の「こんなはずじゃなかった…」を未然に防ぐことができます。

  • 介護経験の背景(施設系か訪問系か)
  • 身体介護の実務経験(どの程度できるか・得意か)
  • 日本語の報告力(どの場面まで口頭で伝えられるか)
  • 記録の読み書き(事業所の記録用紙を読めるか・書けるか)
  • シフトの希望(早朝や夜間の勤務に対応できるか)
  • 移動・通勤環境(通勤手段や担当エリアに無理がないか)
  • 生活面の相談役(困ったときの相談窓口が決まっているか)
  • 3か月後の目標(将来どんな利用者さんを任せるか明確か)

採用するときは、事業所側の都合や条件だけでなく、
「本人がどう働きたいか」という希望もしっかり確認することが大切です。

外国人スタッフが働く目的は人それぞれ違います。
「母国の家族に仕送りをするため、しっかり稼ぎたい」 という収入重視の人
「日本語を勉強しながら、将来は介護福祉士の資格を取りたい」 というキャリアアップ重視の人

事業所が「期待すること」と、
外国人候補者の「望む働き方」がぴったり重なっていると、
入社後のミスマッチが減り、長く安心して働いてもらえるようになります。

まとめ

条件さえ満たせば、
訪問介護でも特定技能の外国人スタッフを採用・雇用することができます。

しかし、「制度上認められていること」と
「利用者のお宅に一人で行かせられること」はまったく別の話です。

単独で訪問してもらうためには、法律上の条件に加えて、
事業所として次のような「事前の準備とステップ」をしっかり踏む必要があります。

  • 初任者研修(または実務者研修・介護福祉士)の修了
  • 現場での実務経験
  • 事業所内での研修・同行訪問による指導
  • 利用者さんやご家族への事前の説明と理解を得ること
  • 万が一の体調急変に備えた緊急時連絡体制の整備

これらを一つひとつ整えてから迎えることが、事故やトラブルを防ぎ、
外国人スタッフ本人も安心して長く活躍できる秘訣です。

外国人を採用するときは、「特定技能」などの制度名を見る前に、
実際の現場でどう働いてもらうか
あらかじめ具体的にイメージしておくことが大切です。

採用面接に入る前に、次の5つのポイントを固めておきましょう。

  • 初月に任せる業務(最初に一人でお願いするケアの範囲)
  • 日本語で確認したい場面(現場で必要な対話・報告・記録のレベル)
  • 教育の体制(教え役となる主担当と副担当の配置)
  • 生活支援の範囲(暮らしのサポートをどこまで行うか)
  • 3か月後・6か月後の目標(将来的に任せたい業務や利用者像)

ここまで社内で具体的に決めておくことで、
外国人介護人材候補者の「日本語力」や「介護経験」が、
自社の現場シフトやチームにそのまま当てはまるかどうかを、
迷わず客観的に判断できるようになります。

制度要件の確認を終えたら、次のステップは
「求める候補者像の明確化」と「全体の費用感の具体化」です。
自社の現場条件に合致した候補者像を設定して進めることで、
採用後のミスマッチや運用上のブレを防ぐことができます。

よくある質問

訪問介護で特定技能外国人を受け入れる条件は何ですか?

介護職員初任者研修課程等を修了し、
介護事業所等での実務経験を有する特定技能外国人について、
受入事業所が研修、同行、キャリアアップ計画、相談窓口、
緊急時対応の体制などを整えることで、訪問介護等の訪問系サービスに従事できます。
実務経験は原則1年以上とされています。
詳しくは厚生労働省の訪問系サービスへの従事に関する案内で確認することができます。

技能実習生も訪問介護で働けますか?

一定の条件を満たす技能実習生についても、
訪問介護等の訪問系サービスへの従事が認められています。
特定技能と同じく、研修、同行、利用者・家族への説明、
相談体制、緊急時対応の準備が求められます。
なお、技能実習制度は育成就労制度へ移る予定があるため、
新規受け入れを考える場合は
厚生労働省の育成就労制度に関する案内も見ておく必要があります。

特定技能の外国人介護士は何年働けますか?

特定技能1号は、通算で原則5年以内の在留期間です。
介護分野で長く働いてもらうことを考える場合は、
介護福祉士資格の取得や在留資格「介護」への移行も視野に入ります。
採用時点では、5年の上限だけでなく、本人がどのようなキャリアを希望しているかを聞いておくと、教育計画を立てやすくなります。

N4の外国人介護士に介護記録を任せてもよいですか?

N4は、基本的な日本語を理解できる水準です。
ただし、介護記録を任せられるかは、試験レベルだけでは決めきれません。
訪問介護では、実施内容、状態変化、家族からの連絡、
事業所への報告を短く正確に残す力が求められます。
最初は記録の型を用意し、教育担当者が修正しながら任せる範囲を広げるほうが現実的です。

外国人介護士は夜勤や早朝の訪問に入れますか?

制度上の業務範囲を満たしていても、
夜勤や早朝の訪問は慎重に考えるべきです。
利用者の転倒、体調急変、訪問遅れなどが起きたとき、
本人が日本語で報告できるか、事業所がすぐ受けられる連絡体制を持っているかが問われます。最初から一人で任せるのではなく、日中の同行や記録確認を経て、利用者ごとの難易度を見ながら広げる方が双方にとって安全です。

訪問介護で外国人材を採用する費用は何にかかりますか?

採用費、在留手続き関連の費用、支援費、住居準備、生活立ち上げ、
同行訪問や記録指導にかかる教育時間などが主な費用です。
金額は採用ルートや委託範囲、住居支援の内容によって変わります。
採用単価だけでなく、受け入れ後の教育工数と離職時の再採用費まで
含めて見ると、社内で検討しやすくなります。

記事の監修者

播征幸のアバター 播征幸 海外人材専門家

総合商社、外資系IT企業などで培った経験をもとに、外国人材支援を通じて企業の成長と持続可能な社会づくりに貢献しています。

目次