技能実習から特定技能へ移行する条件|介護施設が見る手続き・費用・受け入れ体制

介護職員の確保が非常に厳しい状況の中、
「日々のシフトを回すだけでもう限界!」と、
現場の疲弊を感じている介護施設も多いのではないでしょうか。
そんな中、「今働いてくれている技能実習生は、
現場にも慣れてくれたし、できればこのまま、うちの施設で働いてほしいな」
と期待を寄せている経営者や管理職の方も多いはずです。
でも、いざ「このまま残ってもらおう」と考えたとき、
こんな疑問が浮かんできませんか?
- 「技能実習から『特定技能』って、どうやって移行するの?」
- 「試験はもう一度受け直しになるの?」
- 「今の施設で、そのまま働き続けてもらうことはできるの?」
こうした手続きや制度の仕組みをあいまいなままにしておくと、
あっという間に在留期限が迫ってきてしまいます。
直前になって慌てると、本人のビザ手続きが間に合わないだけでなく、
シフトの調整や引き継ぎのやり直し、さらには新しい採用コストまで
一気にかかってしまうリスクも……
技能実習から特定技能へ切り替えるときは、
ビザの条件などの「制度上のルール」をクリアするだけでは不十分です。
給与などの雇用条件はもちろん、生活や仕事の支援体制、
どこまで日本語の業務(記録や申し送りなど)を任せるか、
さらには夜勤や訪問サービスにいつから入ってもらうかまで、
あらかじめ具体的に考えておくことがとても大切です。
この記事を読み終わるころには、技能実習2号を終えたスタッフに
「特定技能」へ切り替えてもらうための条件や、
施設側でそろえる書類・準備がすっきり整理できているはずです。
さらに、移行後に生じやすい現場の負担や課題についてもあらかじめ把握し、
採用前のチェックリストとして具体的に検討できるようになります。
技能実習から特定技能へ移行するための基本要件と手続き
技能実習から特定技能へ切り替えるには、
外国人スタッフ本人のビザ(在留資格)を「技能実習」から「特定技能1号」
へと変更する手続きが必要です。
施設長が「ビザの期限だけ」に気を取られて対応が後手に回ってしまうと、
在留期間の更新手続き、雇用契約の更新、支援計画の策定、
現場での配属準備などが一時期に集中してしまいます。
その結果、手続きに追われて現場のシフト編成にも支障をきたす恐れがあります。
介護分野の受け入れ制度には、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能などがあります。
制度の種類は、厚生労働省の外国人介護人材の受入れに関する案内 で確認することができます。

技能実習と特定技能の違い
それぞれの制度上の話でいうと、
技能実習は「技術を学んで母国に持ち帰ってもらうため」の仕組みです。
一方の特定技能は、「深刻な人手不足を補うために、
ある程度のスキルを持つ外国人を受け入れる」ためのビザ(在留資格)になります。
介護現場の視点に置き換えると、
技能実習は「手厚く指導・育成しながら学んでもらう段階」、
特定技能は「一定の実践力を前提に、即戦力として業務を任せていく段階」
と整理すると理解しやすくなります。
ただし、制度上の位置づけが変わるからといって、
本人の業務範囲や負担を急激に増やすのは避けるべきです。
既存の職員が「特定技能になったら全業務を任せられる」と受け止めてしまうと、
申し送りや介護記録の作成、ご家族対応などで、外国人スタッフが孤立し、
大きなストレスや負担を感じる原因になってしまいます。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 技能の習得・移転 | 一定の技能を持つ人材の就労 |
| 介護施設での見方 | 教育を前提に受け入れる | 現場業務を担う人材として受け入れる |
| 手続き | 技能実習計画にもとづく | 在留資格変更や支援計画が必要 |
| 支援 | 監理団体との関係が中心 | 受け入れ機関または登録支援機関が支援 |
| 在留期間 | 実習段階に応じる | 通算で原則5年まで |
管理者の方は、外国人スタッフのビザ(制度)が変わるタイミングで
「本人のこれからの役割」について周りのスタッフとしっかり共有しておきましょう。
切り替わった初月からいきなり「夜勤」や「後輩の指導」まで任せるのではなく、
「今スムーズにできている仕事」と「これから少しずつ任せていく仕事」
を分けて段階を踏むほうが、現場も本人も無理なく進められます。
特定技能への移行に必要な在留資格変更とは?
日本にいる技能実習生が「特定技能」として働き続けるには、
ビザ(在留資格)を切り替えるための「在留資格変更許可申請」
という手続きが必要となります。
この手続きは、在留の目的を変更し、新たに取得する「特定技能」としての
業務を行うために実施するものです。具体的な申請要件や手続きの詳細については、
出入国在留管理庁の在留資格変更に関する案内 で確認することができます。
現場で特に注意したいのは、「ビザの変更申請中だから」といって、
フライングで特定技能としての仕事を始めさせることはできないという点です。
夜勤シフトや担当配置表に入れるタイミングは、「そろそろ許可が出るだろう」という予想ではなく、「実際に変更許可が下りた日」を基準にして計画を組みましょう。
特定技能へ移行できる条件とは?
介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は、
特定技能1号への移行で試験が免除される場合があります。
※注意:令和9年4月からのルール変更について
現在は、技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で「特定技能1号」へ切り替えられます。
ただし、令和9年(2027年)4月以降は制度改正により、特定技能1号へ移行する際にも「技能試験」と「日本語試験」の合格が求められる方針となっています。
そのため、今後は現場での受け入れと並行して、日本語検定や技能試験に向けた学習サポートを整えておくことがより重要になります。
介護分野の特定技能の受け入れ条件や試験については、
厚生労働省の介護分野における特定技能外国人の受入れ案内 に最新の案内があります。

技能実習2号良好修了者の試験免除
特定技能1号として働くには、原則として「技能」と「日本語」
の2つの試験に合格する必要があります。
介護分野で受ける主な試験は、介護のスキルを測る「介護技能評価試験」と、
専門用語などの理解度を見る「介護日本語評価試験」、
そして日常的な日本語能力を測る試験(JLPTやJFT-Basicなど)のあわせて3つです。

ただし、介護の技能実習2号を「良好に修了」していれば、
試験を受けずにそのまま特定技能1号へ切り替えられるルールがあります。
ここで注意したいのが、
「良好に修了=ただ3年間の実習が終わった」という意味ではない点です。
実習を最後まで問題なくやり遂げているか、評価ややってきた作業内容が条件に合っているかなど、きちんと確認しておく必要があります。
※注意:令和9年4月からのルール変更について
現在は、技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で「特定技能1号」へ切り替えられます。
ただし、令和9年(2027年)4月以降は制度改正により、特定技能1号へ移行する際にも「技能試験」と「日本語試験」の合格が求められる方針となっています。
そのため、今後は現場での受け入れと並行して、日本語検定や技能試験に向けた学習サポートを整えておくことがより重要になります。
外国人スタッフ本人がどんなに現場でまじめに働いていても、
制度上の書類が1枚足りないだけで、
ビザの手続きがストップしてしまうことがあります。
管理者は監理団体や登録支援機関と早めに連携し、技能実習2号をしっかり修了したことを証明できる書類をあらかじめ確認・確保しておきましょう。
事前に準備を進めておくことで、在留期限ギリギリになって現場が大混乱するのを防ぐことができます。
日本語要件の見方と現場での日本語力
JLPTは、日本語能力試験のことです。
N4は基本的な日本語をある程度理解できる水準、
N3は日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる水準を指します。

技能実習2号を修了して試験が免除されたからといって、
「介護の現場での日本語力チェック」まで省略していいわけではありません。
利用者への声かけや入浴介助中の安全確認、申し送りでの状態変化の報告、
そして介護記録に事実をわかりやすく書く力——こうした実践的な日本語力は、
試験免除の条件を満たしているかだけでは分からない部分です。
たとえば、
夜勤明けの申し送りで「夜間2時にトイレ誘導。ふらつきあり。転倒なし」と的確に伝えられるか。
あるいは、ご利用者が発熱したときに、看護スタッフへ体温や食事量、水分量、いつから様子が違っていたかを漏れなく報告できるか。
施設側としては、特定技能へ切り替える前に、こうした実際の業務シーンを外国人スタッフ本人と一緒に振り返りながら、しっかり確認しておきたいところです。
特定技能(介護)人材・雇用条件と報酬について
特定技能の外国人スタッフを受け入れる際は、給与や勤務時間などの労働条件を、
同じ仕事をする日本人スタッフと「同等以上」に設定することが法律で義務付けられています。
「外国人だから」という理由で給与を低く抑えたり、不利な労働条件を設定したりすることはできません。評価基準や昇給・手当のルールも含め、日本人と同等以上の待遇をしっかり整える必要があります。
雇用条件や受け入れ機関の注意点は、出入国在留管理庁の雇用における注意点 で確認してから進める必要があります。

特定技能へ切り替える際、多くの施設が迷うのが
「技能実習のときと同じ給与や条件のままでいいのか?」という点です。
特定技能になると、雇用契約だけでなく、任せる業務範囲やサポート体制(支援計画)
も大きく見直すことになります。
もし特定技能になって本人の担当する仕事が広がるのであれば、
それに合わせて評価や給与も見直し、理由をきちんと本人へ説明することが欠かせません。
この点をあいまいにしたままだと、
「仕事は増えたのに給与が変わらない」と本人が不満を感じ、
離職につながってしまうおそれがあります。
在留資格変更の手続きと準備
技能実習から特定技能への移行手続きは、
「在留期限から逆算して計画的に進めること」が鉄則です。
期限ギリギリになってから準備を始めると、
外国人スタッフ本人に揃えてもらう書類、法人側で作成する書類、
登録支援機関などへの委託手続きが一気に重なってしまいます。
その結果、管理者が日常の現場フォローと膨大な事務作業を
同時に抱え込むことになり、業務がパンクする原因になってしまいます。
特定技能関係の申請や届出は、出入国在留管理庁の特定技能関係手続 で案内されています。
技能実習からの移行に施設側で確認する書類
技能実習から特定技能へ移行する際は、外国人本人の書類だけでなく、
「受け入れる施設側の体制」を示す書類も数多く用意する必要があります。
代表的なものとしては、以下のような資料が挙げられます。
- 技能実習2号を良好に修了したことを示す資料
(実習生の評価調書や修了証書など) - 特定技能で任せる業務内容
(特定技能として担当してもらう具体的な業務範囲) - 雇用契約書と労働条件
(日本人と同等以上の待遇を明記した契約内容の作成) - 支援計画の作成方法
(自社で実施するか、登録支援機関へ委託するか) - 登録支援機関へ委託する範囲
(どこまでのサポート業務を支援機関に任せるかの切り分け) - 住居、生活案内、相談窓口の担当者
(住まいの確保、日本語・生活ガイドの準備、社内の相談窓口・担当者の配置) - 在留期限と申請予定日
(現在のビザの有効期限から逆算した、入管への申請予定日の設定)
書類の幅が広いため、外国人スタッフ本人への案内と並行して、
法人側の資料準備も早めに進めておきましょう。
移行手続きの書類は、事務担当者だけで完結させず、
必ず配属先の管理者(現場リーダー)にも共有しておく必要があります。
もし現場が何も知らないまま移行日を迎えてしまうと、
既存スタッフが「今日からどこまでの業務を任せていいのか」判断できず、
本人への指示にバラつきが出てしまいます。
「どんな業務を担当し、どのような条件で働くのか」
を現場全体で把握しておくことが、
スムーズな業務スタートと現場の混乱防止につながります。
特定技能1号における支援計画と委託の仕組み
特定技能1号の外国人スタッフを受け入れる際は、仕事面だけでなく、
日々の暮らしをサポートするための「支援計画」を作成し、
それに沿って支援を行うことが義務付けられています。
この支援業務は、自社(受入施設)で直接行うこともできますが、
専門機関である「登録支援機関」へすべて、または一部を委託することも可能です。
支援の考え方は、出入国在留管理庁の1号特定技能外国人支援に関する案内 で確認できます。

介護の現場では、業務以外の生活に関する相談が管理者に
集中してしまうことが少なくありません。
住まいのトラブルや病院の受診手続き、税金・年金の書類対応、
母国への送金など、本人が困りごとを抱え込むと、
日々の勤務にも悪影響が出てしまいます。
事前に「誰がどこまでサポートするのか」の役割分担を決めておくことで、
管理者や教育担当者が生活相談まで抱え込み、現場に混乱を招くことを防ぐことができます。
専門家の声(播 征幸)
登録支援機関のサービスとは、特定技能の外国人がスムーズに労働ができるように、入国時の空港への出迎えと住居への送迎に始まり 日本文化に関してのオリエンテーション等の生活のサポートを行うことです。ただ、それらはあくまで必要最低限のサービスであり、外国人材が職場で気持ちよく働くためには、彼らの悩み、疑問に真摯に向き合うコミュニケーションのサポートが必要になってきます。単なる料金の安さだけではなく、登録支援機関がこうした問題に対してどのように対処してくれるのか、契約の際にきちんと確認することが肝要かと思います。
在留期限が近く変更申請が間に合わないケース
在留期限までに「特定技能1号」への変更申請が間に合わない場合、
条件を満たせば移行準備のためのビザ「移行準備のための特定活動」
という在留資格で一時的に猶予が認められるケースがあります。
ただし、これは誰でも自動的に使える救済策ではありません。
「なぜ期限に間に合わなかったのか」という合理的な理由や、
施設側がしっかりと手続きを進めている実態・支援の見込みがあるかなど、
厳しい条件をクリアする必要があります。
在留期限が近づくと、本人は「このまま日本で働けないのでは…」
と大きな不安を抱えます。ここで管理者があいまいな返答をしてしまうと、
不信感から転職や帰国を考え始めてしまう原因になってしまうことも。
そのため、遅くとも期限の3か月前には、法人本部と現場(管理者)で、
現在の在留期間、申請予定日、書類の不足、移行後の配属をすり合わせ、
外国人スタッフ本人にも進捗を伝えて安心させてあげることが大切です。
技能実習から特定技能への移行後の費用と受け入れ体制
技能実習から特定技能への移行にかかる費用は、
ビザの申請手数料だけで考えると大きなズレが生じてしまいます。
実際には、申請費用だけでなく、支援委託費、住居や生活立ち上げ、
教育時間、離職時の再採用費のような「目に見えにくい費用や隠れたコスト」
も含めて試算しておく必要があります。
「採用時の費用」だけでなく、受け入れから定着までにかかる
トータルコストを把握しておくことが、適切な予算管理につながります。
費用を先に見ておきたい場合は、
料金表ダウンロードページ で採用前後にかかる費用の内訳を確認することができます。


特定技能・採用前後にかかる費用
自施設で働いていた技能実習生をそのまま特定技能へ移行させる場合、
外部から新規採用するよりも大幅に費用や労力を抑えられます。
最大のメリットは、日頃の勤務態度や介護への向き合い方、
現場での日本語コミュニケーション力をすでに熟知している点です。
面接や書類だけでは分からない「人と現場の相性」を事前に把握できているため、
ミスマッチによる早期離職のリスクを最小限に抑えられます。
一方で、費用がゼロになるわけではありません。
次のような費用や実務的な負担が発生します。
| 費用・工数 | 内容 | 現場への影響 |
|---|---|---|
| 申請関連 | 在留資格変更の書類準備、専門家への依頼など | 法人本部や事務担当の作業が増える |
| 支援関連 | 支援計画、自社支援、登録支援機関への委託 | 管理者や相談担当の役割が変わる |
| 住居・生活 | 住まい、生活案内、行政手続きの支援 | 生活相談が勤務に影響することがある |
| 教育時間 | 記録、申し送り、夜勤前研修、事故報告 | 教育担当者の時間を確保する必要がある |
| 定着支援 | 面談、評価、希望条件の確認 | 早期離職を防ぐ土台になる |
費用面で見ると、同じ施設で移行することは
「外部から新しく採用し直さずに済む」という大きなメリットがあります。
しかし、本人の希望条件を確かめないまま形式的に契約を更新してしまうと、
移行後に「思っていた条件と違う」と別の施設へ転職されてしまうリスクもあります。
特定技能への切り替えは、単なる手続きではなく、
外国人スタッフ本人の希望をしっかり聞き出し、
お互いの認識を合わせる大切な機会と捉えることが大切です。
特定技能への移行に伴う教育内容・業務の変化への対応
技能実習から特定技能へステップアップすると、
現場で任せる役割とともに教育(指導)の内容も大きく変わります。
技能実習の段階では「基本的な介護業務を覚えること」が中心でしたが、
特定技能になると、介護記録、申し送り、夜勤帯の急変対応、
家族からの質問への一次対応など、
より判断力やコミュニケーション力が求められる業務へと範囲が広がっていきます。
教育担当者が一人で指導も相談も抱え込んでしまうと、
外国人スタッフへのフォローが遅れたり、周りのスタッフからの質問や
対応依頼が一気に集中してパンクしてしまいます。
移行後の最初の1か月だけでも、主担当、副担当、生活相談の窓口などの
役割を分担しておくと「誰が何を担当するのか」を明確になり、
指導側の負担が分散されるだけでなく、外国人スタッフ本人も
「誰に何を聞けばいいのか」迷わずに安心して相談できるようになります。
キズナキャリア編集部では、技能実習から特定技能への移行を検討する際、
「制度の名前や枠組み」以上に、まず現場の実務に即した『5つのポイント』
を確認することをおすすめしています。
- 移行後、初月に任せる業務
- 日本語で確認したい場面(記録や申し送りのコミュニケーション)
- 教育担当と副担当の配置
- 生活支援の範囲(自社でするのか、外部へ委託するのか)
- 3か月後・6か月後に任せたい業務
例えば、「初月は日勤帯で記録と申し送りを安定させ、
3か月後に遅番、6か月後に夜勤の一部へ広げる」といった
ステップを踏むといった方法が効果的です。
外国人スタッフも無理なくステップアップできるうえ、
既存スタッフも「今どこまで任せてよいか」を迷わず共有しやすくなります。
日本語レベルとシフト配置
「特定技能の資格を得たこと」と、
「すぐにすべてのシフトを任せられること」は別として考える必要があります。
資格基準だけで日本語力を判断してしまうと、
実際に夜勤を開始した際、転倒時の緊急報告や申し送りの場面で
「うまく伝わらない」という問題が起こりがちです。
その結果、本人だけでなくペアを組む夜勤スタッフにも大きな負担がかかってしまいます。
日本語能力試験(JLPT)の等級はあくまで目安です。
介護現場では「試験に受かっているか」だけでなく、
「実際の業務場面で言葉を交わし、正確に伝え合えるか」を見極めた上で、
段階的にシフトを任せていくことが大切です。
日本語能力試験の水準は、日本語能力試験の公式案内 で確認することができます。


介護現場で求められる「日本語力」申し送り・介護記録・利用者対応
日本語の力を確認するときは、「日常会話ができるか」だけでは不十分です。
介護の現場では、利用者の状態や状況を「短い言葉で、正確に伝える力」が求められます。
事前に見ておきたい場面は、次の4つです。
| 場面 | 見るポイント |
|---|---|
| 申し送り | 状態変化、時間、対応内容を順番に伝えられるか |
| 介護記録 | 事実と本人の様子を短く書けるか |
| 利用者対応 | 声かけ、拒否があるときの対応、聞き返しができるか |
| 緊急時報告 | 転倒、発熱、食事量低下などを上司へ伝えられるか |
利用者から「今日はお風呂に入りたくない」と言われたとき、
「理由を聞き取り、無理に進めず、既存スタッフへ相談できるか」
配属前にこうした具体的な場面を設定し、
面談やロールプレイで対応力を確認しておくと、
現場に入った後の外国人スタッフの不安を大きく減らすことができます。
特定技能・夜勤配置の考え方と確認しておくべき留意点
特定技能の外国人介護士が夜勤に入ること自体は、制度上に問題はありません。
ただし、夜勤は日勤帯と比べてスタッフの人数が少なくなるため、
一人で異変に気づき、報告し、記録を残すという場面が格段に増えます。
夜勤帯では、利用者の転倒や急な発熱、センサー対応、不穏状態、
看取り期の状態変化など、突発的なトラブルへの臨機応変な対応が求められます。
たとえ本人に「夜勤に入りたい」という意欲があっても、
以下の重要項目をしっかり理解・習得できてから配置することが不可欠です。
管理者の方は、夜勤開始前に次の項目を確認しておくと現場での不安を抑えられます。
- 夜間の連絡先と報告順
- 転倒時の報告文例
- 発熱時に見る項目
- 利用者ごとの注意点
- 記録で使う表現
- 困ったときに呼べる職員
事前の準備と確認を徹底することが、現場の安全と本人の安心した就労につながります。
訪問系サービスにおける外国人介護士受け入れの条件
訪問介護をはじめとする訪問系サービスでも、
一定の条件を満たすことで技能実習生や特定技能外国人を
受け入れることが認められています。
厚生労働省の案内では、介護職員初任者研修課程等の修了、
介護事業所等での実務経験、利用者・家族への事前説明、同行、研修、
相談窓口、緊急時の環境整備などが挙げられています。
訪問系サービスの扱いは、厚生労働省の外国人介護人材の訪問系サービスに関する案内 で最新情報を確認してください。


訪問介護をはじめとする訪問系サービスは、
常に先輩が近くにいる施設内の業務と違って、
「利用者の自宅で一人で対応する時間」が圧倒的に長くなります。
そのため、訪問対応へ業務を広げるときは、
単に「制度上のルールをクリアしたか」だけでなく、
現場で本人が困ったときに抱え込まない仕組みづくりが欠かせません。
特定技能移行前後で避けたい失敗・在留資格の変更と現場の見直し
技能実習から特定技能への移行で最も避けたいのは、
在留資格(ビザ)の手続きだけを済ませて、
「現場の業務や任せ方を変えないこと」です。
特定技能に切り替わったにもかかわらず、
「どこまで業務を任せてよいのか」が分からないまま以前の配属が続くと、
外国人スタッフは、「資格が上がったのに同じ雑務ばかり任される」と感じ、
既存スタッフも「教える負担も減らない…」と双方に不満が溜まってしまいます。
ビザを変えるタイミングで、
「これから任せる仕事の範囲」を現場全体でしっかり共有し、
チームでの働き方も一緒にアップデートしていくことが大切です。
技能実習から特定技能へ移行後・よくある失敗
技能実習から特定技能への移行後に、よくある落とし穴は、
「今までうちで働いていたスタッフだから大丈夫だろう」と安心してしまい、
特定技能に切り替わった後の新しい役割を曖昧なままにしてしまうことです。
技能実習の期間に日勤がスムーズにできていたとしても、
特定技能になった途端に、 夜勤のシフト 、詳しい介護記録の作成 、
ご家族からの質問対応 といった業務まで一気に任せてしまうと、
外国人スタッフはプレッシャーで疲弊してしまいます。
たとえ慣れているスタッフであっても、
新しい業務は少しずつ段階的に広げていく計画を立てることが大切です。
もう一つの落とし穴は、「生活支援を登録支援機関へお任せしたから安心」と考えて、
施設側の関わりが薄くなってしまうことです。
ビザや生活面の手続きを外部へ委託したとしても、
日々の現場で本人と一緒に働き、一番近くで見守るのは施設のスタッフです。
申し送りでうまく伝えられずに困っている、
利用者との会話に緊張している、
自分の業務評価の基準が分からず不安を感じている
こうした「業務上の小さな不安」は、外部の支援機関ではなく、
フロアの管理者や指導担当者が現場で気づき、
声をかけて拾い上げてあげることが必要になります。
特定技能への移行前チェック項目
技能実習から特定技能への移行を進めるときは、
「制度」「書類」「現場」の3つの視点を同時にチェックすることが大切です。
人事や採用担当者だけで進めてしまうと、
「書類の手続きは完了したけれど、現場の準備ができていない」
といったズレが起きやすくなります。
採用担当だけで進めず、施設長、配属先の管理者、教育担当者、
必要に応じて登録支援機関も含めて確認することが大切です。
| 確認項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 制度条件 | 技能実習2号の良好修了、試験免除の扱い、在留期限 |
| 雇用条件 | 報酬、労働時間、業務内容、日本人職員との均衡 |
| 支援体制 | 支援計画、自社支援、登録支援機関への委託範囲 |
| 日本語 | 申し送り、記録、利用者対応、緊急時報告 |
| シフト | 日勤、遅番、夜勤、訪問系サービスへの段階 |
| 定着 | 面談頻度、評価説明、本人の希望条件、生活相談 |
制度を理解しても、「自社に合う人材がいるか」は別の問題です。
移行対象者だけでなく、今後の採用条件まで見直したい場合は、
人材スカウト画面 で日本語レベルや介護経験を見ながら候補者像を確認できます。


まとめ
技能実習から特定技能への移行については、
技能実習2号を「良好に修了」しているか、
在留資格(ビザ)の変更手続きができるか。
特定技能としての雇用条件や支援体制を整えられるか、
の3つのポイントが中心となります。
たとえ試験免除の対象であっても、自動的に切り替わるわけではありません。
施設側でしっかりと以下の準備を進める必要があります。
- 在留資格の変更手続き(出入国在留管理局への申請準備)
- 新しい雇用契約の締結(特定技能向けの賃金・条件設定)
- 支援計画の策定(生活支援や社内フォローの体制づくり)
- 配属先の受け入れ準備(現場での役割分担や教育体制の確認)
「手続き」と「現場の受け入れ態勢」をバランスよく
並行して進めていくことが大切です。
次に取る行動は、在留期限と技能実習2号の修了状況を確認し、
移行後の雇用条件と支援体制を施設内で話し合うことです。
あわせて費用と候補者条件を見ておくと、今いる人材の移行だけでなく、
今後の外国人介護人材の採用にもつながります。










