技能実習介護とは|特定技能との違い・移行・育成就労への変更点

技能実習・育成就労・キズナキャリア.

「技能実習生を受け入れた経験はあるけれど、次も同じ制度で進めてよいのかな…?」と、
悩まれている施設長や管理者の方も多いのではないでしょうか?

介護の現場では、早番や遅番の急な穴埋めを日本人スタッフが交代でカバーしたり、
夜勤の負担が一部の人に偏ってしまったり、時には管理者さん自身が慌てて現場に飛び込む場面も珍しくありませんよね。

そんな中、「以前に、技能実習生が戦力になってくれた」という実感がある一方で、
日本語のフォロー、生活相談、監理団体とのやり取り、特定技能への移行対応まで考えると、
「次も全く同じルートでいいのかな…?」と不安になるのは、
現場の苦労や今後の大変さをしっかり知っているからこそです。

技能実習(介護)は、単なる「人手不足を埋めるための仕組み」ではありません。
もともとは
「日本の介護技術や知識を学んでもらい、母国に持ち帰って活かしてもらう」
という国際貢献を目的とした制度です。

そのため介護の現場で受け入れる際には、安全とケアの質を守るための
介護ならではの特別なルール」が決められており、
日本語の要件受け入れ人数の上限夜勤や訪問系サービスの安全ルールなど、
現場運用に直結する条件があります。

制度の目的やルールを事前に理解しておかないと、
「すぐ夜勤に入ってもらえると思っていた」「訪問に配置できなかった」
といったギャップが生まれてしまいます。

さらに、従来の「技能実習制度」は「育成就労制度」へと変わる準備が進んでいます。
これから外国人スタッフを受け入れるなら、
「これまでも技能実習だったから次も同じでいいか」と
過去の経験をそのまま繰り返すのは少し危険かもしれません。
特定技能への移行、教育担当の分担、費用、定着などの受け入れ体制を
しっかりと見直す必要があります。

この記事を読み終えるころには、「どの制度名を選ぶか」ではなく、
「うちの現場の受け入れ体制なら、どのルートが一番合っているか」という視点から、
次の採用ルートをしっかりと選べるようになるはずです。

目次

技能実習介護の基本とは?

技能実習(介護)は、日本の介護技術を学んでもらい、
将来母国の福祉に活かしてもらうための「人材育成」を目的とした制度です。

そのため、「単なる人手不足を埋めるため」だけに受け入れてしまうと、
どうしても教育計画や日本語のサポートが後回しになってしまいます。

その結果、現場の教育担当者に教える負担やフォローがズッシリと重くかかり、
疲弊してしまう原因になってしまいます。

外国人介護人材の受入れルートには、
EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能があります。
介護分野で使われる主な制度は、厚生労働省の外国人介護人材に関する案内で公表されています。

外国人介護人材受け入れの仕組み・キズナキャリア

技能実習制度の本来の目的は、
「日本の技術を途上国へ伝え、国際貢献(人づくり)をすること」であり、
「人手不足を穴埋めするための労働力確保の仕組み」ではありません。
制度の基本理念は外国人技能実習機構の基本理念で確認することができます。

技能実習の基本・制度の趣旨と受け入れの留意点

技能実習(介護)は、外国人が日本の現場で介護の知識や技術を身につけ、
将来母国で活かしてもらうための制度
です。

介護の仕事については、単に決まった作業を覚えるだけでは成り立ちません。
利用者のからだを支える「身体介護」はもちろん、身の回りのお世話をする「生活支援」、
日々の経過を記す「記録」、次のスタッフへ引き継ぐ「申し送り」など、
幅広い知識とコミュニケーションが求められます。

だからこそ「作業をこなす」だけでなく、
「ケアの意味やコミュニケーションまでしっかり教え育てる」という視点が必要になります。

たとえば、食事介助の手順を教えるときも、「なぜこの姿勢にするのか」
「もしむせてしまったら、誰に報告するのか?」といった“理由”や“リスク管理”まで
しっかり伝える必要があります。

施設長・管理者の方は、技能実習生をただの「戦力」として数えるのではなく、
「誰が・どの業務を・どう教えるのか」受け入れ前の段階で具体的に分担を決めておくことがとても大切です。

介護職種における日本語要件とは?

介護の技能実習では、日本語能力も重要なクリア条件(要件)です。
厚生労働省の介護職種に関する基準では、
実習のステップに合わせて次のような日本語レベルが求められています。

入国時(1年目/第1号):N4相当以上
・ゆっくりであれば、基本的な日本語を理解できるレベル
2年目〜5年目(第2号・第3号):N3相当以上
・日常的な場面で使われる日本語を、ある程度理解できるレベル

つまり、実習が進むにつれて「よりスムーズな会話や理解」が必要になっていきます。

JLPTとは、日本語能力試験のことです。
N4は基本的な日本語をある程度理解できる水準、
N3は日常的な場面で使われる日本語を一定程度理解できる水準とされており、
詳しい目安は日本語能力試験公式サイトの認定の目安で確認することができます。

JLPT日本語能力試験目安・キズナキャリア

ただし、試験の水準と介護現場での会話力は同じではありません。
たとえば、既存スタッフが申し送りで「昨日より歩行が不安定」
「夜間にトイレ希望が3回あった」と伝えたとき、実習生が本当に聞き取れているか、
分からないときに「もう一度教えてください」と質問できるかまで確認してあげることが大切です。

技能実習介護と特定技能はどこが違うの?

技能実習と特定技能の一番の違いは、「制度の目的」と「採用したあとの計画」にあります。

ここを混同してしまうと、管理者自身が「この外国人スタッフを“育てる存在”として見るのか、
“すぐ活躍してもらう戦力”として見るのか」を現場にうまく説明できなくなってしまい、
その結果、指示の出し方や教え方にズレが生まれ、現場のスタッフが戸惑う原因になってしまいます。

特定技能1号は、深刻な人手不足に悩む分野で、「一定のスキルと日本語力を持った外国人」に
即戦力として働いてもらうためのビザ(在留資格)です。
介護分野の場合、おもに利用者の「身体介護」や、それに伴う「生活支援」などの業務を担当してもらえます。制度の詳細は厚生労働省の介護分野における特定技能外国人の受入れ案内で確認することができます。

スクロールできます
比較項目技能実習介護特定技能介護
制度の趣旨技能移転による国際協力人材確保と一定水準の技能活用
対象者技能実習計画に沿って介護技能を学ぶ人材介護技能評価試験・介護日本語評価試験などを満たす人材
日本語の目安第1号はN4相当以上、第2号・第3号はN3相当以上日本語能力試験N4以上などに加え、介護日本語評価試験の合格が必要
受け入れ側の主な負担監理団体との連携、技能実習計画、実習指導支援計画、生活支援、特定技能協議会の対応
現場での見方育成計画と実習内容をそろえる業務配置と定着支援をそろえる

特定技能への移行・切り替え可能な場合

介護の「第2号技能実習(3年間の実習)」を無事に終えた人は、
試験を受けずに「特定技能1号」へ切り替えられる場合があります。

注意:令和94月からのルール変更について 現在は、技能実習2号を良好に修了していれば試験免除で「特定技能1号」へ切り替えられます。 ただし、令和9年(2027年)4月以降は制度改正により、特定技能1号へ移行する際にも「技能試験」と「日本語試験」の合格が求められる方針となっています。 そのため、今後は現場での受け入れと並行して、日本語検定や技能試験に向けた学習サポートを整えておくことがより重要になります。

すでに実習生として現場で働いた経験がある人材であれば、
施設の1日の流れや利用者様への接し方、スタッフ同士の申し送りにも慣れていることもあり、
「即戦力」としてスムーズに現場の大きな力になってくれる可能性があります。

一方で、技能実習から特定技能へステップアップすると、
受け入れる現場側の見方もガラリと変わります。

これまでのように「手取り足取り教える対象」として見るだけではなく、
今後は「どの業務を任せていくか」「夜勤やリーダーのサポート役に進んでもらうか」といった、
一歩進んだ役割まで考えて育てていくことになります。

立場が変わることで求めるレベルも上がるため、
外国人スタッフと現場スタッフの双方が「これからのステップ」をしっかり共有しておくことが大切です。

外国人介護人材・支援義務についての相違点

特定技能1号で外国人を受け入れる場合、事業所(受け入れ側)は「支援計画」を作り、
仕事面だけでなく生活面までしっかりサポートすることが義務づけられています

特定技能は「即戦力」として働いてもらう制度ですが、
「安心して暮らせる環境があってこそ本領を発揮できる」という考え方のもと、
公私ともに寄り添った手厚い支援が求められます。
支援計画の考え方は、出入国在留管理庁の1号特定技能外国人支援に関する案内で確認することができます。

特定技能人材受入支援計画概要-・キズナキャリア.j

技能実習のときに「監理団体」に任せっきりだった生活サポートを、
「特定技能に変わったあと誰が担当するのか」は早めに決めておきたいポイントです。

たとえば本人が「引っ越し」「携帯の契約」「急な体調不良」「母国への送金」などで困ったとき、
すべての相談が管理者に集中してしまうと、本来の現場管理やシフト調達などの業務がストップしてしまいます。

あらかじめ相談先をはっきりさせておくことで、本人が安心して暮らせるだけでなく、
管理者や現場の負担もぐっと減らすことができます。

技能実習生の受入れ条件と準備について

技能実習生を迎えるときは、「制度のルール」だけでなく
「現場の教え方」も一緒に整えておくことが必要です。

せっかく制度上の条件をクリアして受け入れても、
最初の1ヶ月間の教え方が「教える人(担当者)によってバラバラ」だと、
実習生は「誰の言うことを聞けばいいの?」と迷ってしまいます。
それだけでなく、教える側の既存スタッフ同士もやりづらくなってしまいます。

介護の技能実習には、日本語力や入国後の研修、受け入れ人数、夜勤時の安全対策など、
現場の働き方に直結する細かいルールがあります。

特に介護は、利用者の命や生活に直接かかわるお仕事です。
施設長は、「ルール上、何人まで預かれるか(受け入れられる人数)」ではなく、
「現場で責任を持って育てられる人数」を一番に考えることが大切です。

受入れ人数と教育担当について

介護の技能実習生を受け入れられる人数には、
「現場で働く常勤の介護スタッフの人数」に応じた上限が決まっています。

そのため、小さな事業所ほど受け入れられる人数は少なくなります。
また、どんなに大きな施設であっても、
常勤スタッフの数を超える人数の実習生を受け入れることはできません。

人数基準は厚生労働省の介護職種に関する基準で確認しておく必要があります。

技能実習受入可能人数表・キズナキャリア

ただ、制度上の人数枠と、現場で育てられる人数は同じではありません。
受け入れ直後の最初の1ヶ月は、実習生にとって覚えることが山積みです。

具体的には、介護記録の書き方、入浴介助の手順、利用者様への個別のお声がけ、
さらには「フロアごとの暗黙のルール」まで、一度に把握しなければなりません。

この時期に教育担当者を1人だけにしてしまうと、すべての質問や確認が集中してしまい、
担当者の負担が大きくなり、既存スタッフからも「現場がまわらない」と不満につながってしまいます。

夜勤配置の考え方と必要な措置について

技能実習生を夜勤に入れるときは「少ない人数でも安全を守れる仕組み」と
「緊急時の対応ルール」を事前に作っておくことが欠かせません。

たとえば夜勤中に利用者が転倒してしまったとき、
実習生には「ケガの有無や状態を正しく確かめ、リーダーや看護師に
正確に伝えられるか」という対応が求められます。

焦る場面だからこそ、単に「夜勤に入る」だけでなく、
「いざという時に、誰に・何を・どう報告するか」の手順を事前に
しっかり共有しておくことが大切です。

技能実習制度のルールでも、夜勤やトラブル対応などの業務を任せる場合は、
「利用者様の安全を守るための特別な対策(安全措置)」を行うことが決められています。

最初から一人夜勤に近い形で任せるのではなく、
同行、見守り、記録確認、報告練習段階を踏んでステップアップしていく流れ
をつくっておくことで、実習生本人も、一緒に組むスタッフも、
無理なく安心して夜勤に入れるようになります。

訪問系サービスへの配置と事前準備

訪問介護などの「訪問系サービス」では、利用者のご自宅で
スタッフが一人で対応する場面が多くなります。

そのため、施設内での勤務以上に状況を聞き取り、事業所へ連絡し、
家族からの質問に落ち着いて答える力
が必要になります。

令和7年4月以降、一定の研修修了や実務経験などを有する技能実習生・特定技能外国人について、
訪問介護等の訪問系サービスへの従事が認められています。

ただし、あらかじめ「利用者・家族への事前説明」、「同行訓練(先輩との同行研修)」、
「キャリアアップ計画の作成」、「相談窓口の設置」、「緊急時の連絡体制」などの
準備や体制づくりをしっかり整えておく必要があります。

詳しくは厚生労働省の外国人介護人材の訪問系サービスへの従事に関する案内で確認できます。

外国人介護士の訪問系サービスの従事について・キズナキャリア

技能実習介護人材の採用費と教育負担コスト

技能実習生の受け入れにかかる費用は、
「採用時のイニシャルコスト(初期費用)」だけで計算すると、
あとから思わぬ負担に悩まされることになります。

現実的には、採用費用だけでなく、監理団体への費用、住居の準備費用、
生活立ち上げのサポート、日本語の学習費用、教育にかかる「時間(人件費)」など、
見落としがちなコストまでトータルで見ておく必要があります。

これらを事前に組み込んでおかないと、あとから管理者や教育担当者の負担が膨らみ、
現場が疲弊してしまう原因になってしまいます。

「採用費」などの目に見える金額だけで比べると、技能実習生は安く感じられることがあります。
ただ、外国人スタッフの入職後に、毎日30分ずつ記録確認や日本語フォローが必要になれば
その教える時間は、既存スタッフの通常業務時間から削られていることになります。

採用にかかるお金だけでなく、「入社後に指導スタッフの時間がどれだけ使われるか」
という「コスト」まで計算に入れておくことが大切です。

技能実習生・採用前後にかかる費用

技能実習生の受け入れでは、監理団体への費用、送出しに関わる費用、
在留手続き、講習、住居準備、生活備品、通勤手段
の準備や手続きで費用が発生します。

これらの費用は、契約する監理団体、実習生の母国、
法人(施設側)がどこまで生活準備をサポートするかによって金額が大きく変わります。
そのため、検討する段階で「どこにどんな費用が含まれているか」を
しっかり確認しておくことが重要です。

介護施設で技能実習生を受け入れるときは、採用費用だけでなく
「入職したあと、既存のスタッフが教えるために何時間使っているか」
もコスト(費用)として考える必要があります。

たとえば、教育担当者が毎日次のようなサポートをしているとします。

  • 介護記録の文章をチェック・修正する
  • 申し送り(引き継ぎ)の伝え方を教える
  • 利用者様への声かけや対応を一緒に振り返る

こうした指導時間は、目に見える請求書には載りませんが、
「既存スタッフの人件費」という形でお金(コスト)が発生している
「見えない受け入れ費用」です。

費用を先に見ておきたい場合は、料金表ダウンロードページで採用前後にかかる費用を確認できます。

日本語教育と記録の負担

日本語能力試験(JLPT)でN4やN3に合格していても、
「すぐに介護記録を正しく書ける」とは限りません。

JLPTは主に「日本語を読んだり聞いたりする力」を測るテストですが、
介護の現場で求められるのは「短い文章で、事実を正確に書く力」であり、
これはテスト対策とは別のスキルになります。

介護記録では、「トイレ誘導時にふらつきあり」「夕食を半分摂取」「右膝の痛み訴えあり」
といった短い記録が多く使われます。こうした文章を書くには、
日本語の知識だけでなく「利用者のどこを観察すべきか」という介護の視点も同時に求められます。

実習生が書いた記録を先輩スタッフが毎回書き直して終わりにしていると、
教わる本人は「どこをどう直せば正解なのか」が理解できず成長につながりません。
教える側のスタッフも修正作業に追われ、精神的に疲れてしまいます。

単に「書き直してあげる」のではなく、「『ふらつき』という観察のポイント」と
「『〜訴えあり』といった定型文の書き方」をセットで学べるような仕組みやフィードバックの工夫をしていくことが大切です。

離職時のやり直しコストとは?現場の疲弊と教育のやり直しが生む悪循環

技能実習生が途中でやめてしまったり、実習を続けられなくなったりしたときのリスクは、
「失った採用費」だけにとどまりません。

これまでにかかった「教育時間」が無駄になるだけでなく、
急な穴埋めのための「シフト調整」や「次の受入れ準備」といった大きな負担が、
一気に現場へ跳ね返ってきます。

急な欠員で現場がひっ迫し、既存スタッフにしわ寄せがいくと、
既存スタッフの離職につながる可能性もあります。

実習生の受け入れ費用を検討するときは、単純に「いかに安く採用できるか」
という目先のお金だけで判断してしまうと上手くいきません。

本当に見るべきなのは、本人がどんな希望を持って来日するのか、
安心して暮らせる生活環境が整っているか、入職後も日本語の学習を無理なく続けられるかといった「定着するための環境」です。

あわせて、指導にあたる現場スタッフにしっかりと教えてあげる時間や
気持ちのゆとりがあるかどうかも慎重に見極める必要があります。
これらの条件をクリアした上で、受け入れの人数と時期を決めることが大切です。

育成就労への変更と介護施設の対応について

技能実習制度は新しい「育成就労制度」へと大きく変わることが決まっています。

この制度改正を知らないままこれまで通りのやり方で進めてしまうと、
「次の採用計画が狂う」「監理団体との契約更新でバタバタする」
「特定技能への切り替え時期がズレて現場に穴があく」
といった予期せぬトラブルにつながる危険があります。

育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消し、人材育成と人材確保を目的とする新しい制度です。令和9年4月から施行予定であることは、厚生労働省の外国人育成就労制度に関する案内
出入国在留管理庁の育成就労制度に関する案内で確認することができます。

育成就労制度の概要・キズナキャリア

育成就労の基本概要

「育成就労」とは、原則3年間の仕事をとおして、よりステップアップした資格である
「特定技能1号」のレベルまで人材を育てる仕組みです。

そのため、これまで技能実習生を受け入れてきた介護施設も、
「これからどうやって外国人スタッフを受け入れ、育てていくか」
を新制度に合わせて見直すタイミングを迎えています。

施設長や管理職にとって大切なのは、制度が変わることを前に
「技能実習がなくなったら困る…」と受け止めるだけではありません。

本当に必要なのは、「入職した最初の1ヶ月でどんな業務を任せるのか」
「3年後にはどこまでの仕事ができるようになっていてほしいのか」、
そして「次のステップアップとして特定技能に育ってほしいのか」という具体的なビジョンを、
今のうちに現場と共有しておくことです。

「とにかく人手が足りないから来てほしい」という受け身の姿勢ではなく、
「どんな人材をどう育てていくか」という明確なロードマップをあらかじめ描いておくことが、
新しい制度へスムーズに移行し、長く活躍してくれる人材を育てるための第一歩になります。

外国人育成就労ガイド・キズナキャリア

技能実習から育成就労へ・制度変更で見直すこと

制度が変わるタイミングで直す必要があるのは、単なる「どの採用ルートを使うか」
という表面的な問題だけではありません。

実際に大切なのは、現場で教える「教育担当」のサポート体制をはじめ、
日本で安心して暮らせる「生活支援」、将来「特定技能」へステップアップするための仕組み、
さらには「日本語学習」や「資格取得」に向けた手厚いサポートまで、
一連の育成プロセスを施設全体でしっかり支えていく体制づくりです。

特に技能実習生の受け入れ経験がある施設ほど、
「前回うまくいったから今回も同じやり方で大丈夫」と思い込んでしまうことが、
かえって大きなリスクになる場合があります。

制度が変わったあとも現場がパニックにならないようにするためには、
これまで曖昧になりがちだった運用をあらかじめクリアにしておくことが欠かせません。

具体的には、監理団体に任せきりになりがちだった生活面の相談を誰が担当するのか、
特定技能に移行したあとの支援計画を誰がどのように実行していくのか、
外国人スタッフ本人の将来のキャリアの希望をどのタイミングでヒアリングしていくのか、
といった点を事前に決めておくことです。

新しいルールに合わせて誰が何をするのかを整理しておくことが、
制度が切り替わったあとも現場が慌てずに外国人スタッフを迎え入れられる準備となります。

採用前に決めたい受け入れ条件

外国人スタッフの受け入れで失敗を減らすために最も大切なのは、
「技能実習」や「育成就労」といった制度の名前よりも先に、
現場の受け入れ条件(働くルールや教育体制)をしっかり固めておくことです。

ここがあいまいなまま採用してしまうと、現場の既存スタッフは「どこまで任せていいのか」
を毎回迷うことになり、教わる外国人スタッフ本人も「何を目指して頑張ればいいのか」
と成長の道筋を持てなくなり、不安を抱えてしまいます。

外国人材受入制度の仕組みを考える前に、まずは「最初の業務範囲」や「教える手順」
といった現場の土台を整えることこそが、双方にとって安心できるスタートにつながります。

キズナキャリア編集部では、技能実習、特定技能、育成就労のどのルートでも、
次の5つを先に見ることをおすすめしています。

スクロールできます
採用前に見る項目決める内容現場での意味
初月に任せる業務食事介助、見守り、清掃、記録補助など教育担当者の教え方がそろう
日本語で確認したい場面申し送り、記録、緊急時報告、利用者対応面接や配属後の確認が具体化する
教育担当と副担当主担当、副担当、相談先、面談頻度質問が一人に集中しにくい
生活支援の範囲住居、行政手続き、生活相談、体調不良時管理者への相談集中を防ぎやすい
3か月後・6か月後の業務記録、入浴介助、夜勤同行、担当利用者本人の成長と評価を共有しやすい

よくある失敗

外国人の受け入れでよくある失敗は、技能実習生を「人手が足りないフロアの即戦力」
として穴埋めのために急いで現場へ入れてしまうことです。

外国人スタッフが入職した当初は人数が揃って助かっているように見えますが、
時間が経つにつれて「記録の書き直し」「申し送りのフォロー」「日常生活の相談対応」
といった作業が次々と発生します。結果として、教える側の先輩スタッフにすべての負担が集中し、現場が疲れ切ってしまいます。

実習生をただの「人員補填」と捉えるのではなく、
最初はしっかりサポートが必要な「育成枠」として捉え、
教える側の時間や心のゆとりをあらかじめ組み込んでおくことが大切です。

外国人スタッフの本人にとっても、自分が職場で「何を期待されているのか」
が分からないまま働くことは、大きな不安やストレスにつながります。

管理者の方は「最初の1ヶ月で取り組む仕事」「3ヶ月後にできるようになってほしい仕事」、
そして「将来、特定技能へ進みたいのかという本人の希望」を早い段階で丁寧に聞き取り、
その目標や希望を本人と現場スタッフの双方にしっかり共有しておきたいところです。

外国人介護人材・候補者を見るときの視点とは?

これまでに技能実習生を受け入れた経験がある法人こそ、
次の採用では制度の仕組みそのものよりも、
「応募者一人の条件」をどれだけ細かく見極められるかが重要になってきます。

外国人介護人材候補者の日本語のレベル、介護の経験、勤務の希望、
夜勤に対する考え方、生活面の希望、将来の在留資格の希望まで見ていくと、
「うちの施設の現場に合う人材像」がはっきりと見えてくるようになります。

制度を理解しても、「自施設に合う人材がいるか」は別の問題です。
日本語レベルや介護経験を見ながら考えたい場合は、
人材スカウト画面で候補者の条件を確認できます。

まとめ

これまで使われてきた「技能実習」は、日本の介護技術を母国に持ち帰ってもらう
「国際協力」を目的とした制度でした。
これに対し、人手不足を補うために作られたのが「特定技能」です。
そして今後、技能実習に代わって新しくスタートするのが「育成就労」という制度です。

これまで技能実習生を受け入れてきた施設こそ、
次の採用では「今までと同じやり方」を一度見直す必要があります。

外国人介護人材の採用活動を進めるうえで大切なことは、
「技能実習」や「育成就労」といった制度の名前だけに気を取られないことです。
それ以上に、採用する前の段階で「現場での受け入れ体制」をどこまで具体的に決められるかが、
入職後のトラブルやミスマッチを防ぐ最大のポイントになります。

あらかじめクリアにしておきたいのは、次のような「現場のリアルな条件」です。
業務のロードマップ(最初の1ヶ月、3ヶ月後・6か月後に任せたい仕事)
コミュニケーションの場(現場のどの場面で日本語の理解度をチェックするのか)
指導体制(メインで教える教育担当者と副担当者を誰にするか)
生活面のサポート(行政手続きや買い出しなど、どこまで施設側がフォローするのか)

このように「誰が、何を、どこまでサポートし、どう育てていくのか」を
事前に言葉にして固めておくことが、既存スタッフと外国人スタッフの間の認識のズレをなくし、
お互いが安心して働ける環境づくりになります。

制度の変更が迫っている今、次に取るべき行動は、
「新制度の複雑なマニュアルを読み込むこと」だけではありません。

本当に取り組むべきなのは、「自施設の現場で任せたい業務」と、
「候補者の日本語力・介護経験・希望条件」がぴったり噛み合っているかを丁寧に見極めることです。制度変更の時期だからこそ、受け入れ体制と候補者像を合わせて考えていきましょう。

よくある質問

技能実習介護と特定技能介護は何が違いますか?

技能実習介護は、技能移転による国際協力を目的とする制度です。
一方、特定技能介護は、人手不足分野で一定の技能と日本語力を持つ外国人が働くための在留資格です。介護分野の受け入れ制度は、厚生労働省の外国人介護人材に関する案内で確認できます。現場では、技能実習は育成計画、特定技能は業務配置と支援計画をより強く意識して受け入れる必要があります。

介護の技能実習生に必要な日本語レベルはどのくらいですか?

介護職種の技能実習では、第1号技能実習は日本語能力試験N4相当以上、
第2号・第3号技能実習はN3相当以上が要件です。
基準は厚生労働省の介護職種に関する告示で確認できます。
ただし、N4やN3があっても、介護記録や緊急時報告をすぐ任せられるとは限りません。
配属後は、記録例や申し送りの型を使って、現場の日本語を育てる必要があります。

技能実習生は夜勤に入れますか?

技能実習生を夜勤に入れる場合は、利用者の安全確保や緊急時対応に必要な措置を講じる必要があります。
制度上の扱いは厚生労働省の介護職種に関する基準で確認できます。
現場では、いきなり一人で任せるのではなく、同行、見守り、
転倒時の報告練習、記録確認を段階的に行うほうが安全です。

技能実習生は訪問介護で働けますか?

一定の研修修了や実務経験などを有する技能実習生について、
訪問介護等の訪問系サービスへの従事が認められています。
ただし、利用者・家族への事前説明、同行訓練、キャリアアップ計画、
相談窓口、緊急時の連絡体制などが求められます。
詳しくは厚生労働省の外国人介護人材の訪問系サービスへの従事に関する案内で確認してください。

技能実習から特定技能へ移行できますか?

介護職種の第2号技能実習を良好に修了した人は、特定技能1号への移行で試験免除の扱いになる場合があります。特定技能介護の要件や試験免除の考え方は、
厚生労働省の介護分野における特定技能外国人の受入れ案内で確認できます。
移行を見据える場合は、技能実習中から日本語学習、記録、夜勤、
本人のキャリア希望を確認しておくと、移行後の配置を考えやすくなります。

育成就労制度はいつ始まりますか?

育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消して創設される制度で、
令和9年4月から施行予定です。人材育成と人材確保を目的とし、
原則3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成する制度として位置づけられています。最新情報は厚生労働省の外国人育成就労制度に関する案内で確認することができます。

記事の監修者

播征幸のアバター 播征幸 海外人材専門家

総合商社、外資系IT企業などで培った経験をもとに、外国人材支援を通じて企業の成長と持続可能な社会づくりに貢献しています。

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